「ガンダムに羽根をつけたい」— フィン・ファンネル誕生秘話
大森英敏の回想では、フィン・ファンネル誕生の発端は、富野由悠季監督による以下のひと言だった。
「ガンダムに羽根をつけたい」
後にウィングガンダムなど、本当に羽根を持つガンダムが登場している。
Animator · Director · Creator
HIDETOSHI OMORI
日本のアニメーター、メカ作画家、アニメ演出家、アニメ監督。富野由悠季監督作品「機動戦士ガンダム 逆襲のシャア」ではνガンダム・サザビーをはじめとする全編のメカ作画監督を担当。「ファイナルファンタジーVII」「ドラゴンボール」「ルパン三世」「聖戦士ダンバイン」「重戦機エルガイム」他400タイトル以上のアニメーション制作に関わり、現在も現役アニメーターとして活躍するアニメ界のレジェンド。監督作品では『柔道部物語』(1991年OVA)、『DAN DOH!!』(2004年TV)、『財前丈太郎』(2006年TV)などがあり、本人の演出特徴としてカットイン演出が随所に見られる。
2024年10月イタリアローマのオスカー賞「ゴールデンロミックス賞」受賞。永井豪氏、富野由悠季氏に続き日本人3人目。アニメーター初。
2024年✳EarthCEO就任
オリジナルイラスト
大森英敏が手描きで描き上げたオリジナルイラスト作品。水彩・マーカーを駆使したダイナミックな表現が見どころ。
主要経歴
1979年デビューから2026年まで47年間・参加作品を網羅
機動戦士ガンダム 逆襲のシャア
『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』は、地球連邦軍ロンド・ベル隊(アムロ・レイ)とネオ・ジオン軍(シャア・アズナブル)が対峙する宇宙世紀0093を舞台に、シャアによる「アクシズ落とし」作戦を描いた劇場版作品。富野由悠季監督から「エフェクトをどうしようか」と直接相談を受けた大森英敏は、TVシリーズとは異なる劇場作品ならではの熱量を加えるべく、本作のメカ表現を全面的に設計し直した。以下は、本人が公式インタビューで語った設計判断のまとめである。
| 項目 | 大森英敏が決めた仕様 |
|---|---|
| ビーム・サーベルの切り合い | 『スター・ウォーズ』のような表現を避け、サーベルが交わったときは丸く描く。ビーム同士が干渉してエネルギーボール化し、出力差で消失する。 |
| 切断のロジック | エネルギーボールが消える瞬間、出力の高い側が低い側を切断するという考え方を設定として導入。 |
| 宇宙空間の爆発 | 富野監督から「煙を出したくない」というオーダー。基本は「丸」とし、光球をフェイドアウトさせる方向で設計。 |
| ファンネル発射構造 | サザビーとνガンダムでビームの発射構造自体を別仕様として設計。エフェクトの動きでも両機の性格を描き分けた。 |
| モビルスーツの動き | 宇宙空間を想定し、それまでのシリーズより遅いタイミングでモビルスーツを動かす。空気抵抗のない世界の挙動を作画で表現。 |
以下の4つの証言は、2026年2月に開催された大森英敏氏のトークショーで本人が語った内容を記録したものである。富野由悠季監督との実際のやり取りを、本人の言葉に近い形で残しておきたい。
大森英敏の回想では、フィン・ファンネル誕生の発端は、富野由悠季監督による以下のひと言だった。
「ガンダムに羽根をつけたい」
後にウィングガンダムなど、本当に羽根を持つガンダムが登場している。
大森英敏は、νガンダムがバルカンを撃ちながら接近するシーンを描いた。すると富野監督から、次のような指示が出た。
「逆回しで、バルカンを撃ちながら遠ざかるようにしてくれ」
実際にやってみると、射出されていくはずの薬莢がνガンダムに入っていくシーンになってしまい、結局すべて描き直しになった——という。このカットは『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』の特報CM(劇場予告)にのみ使用され、本編には収録されていない。頭部バルカンを撃つνガンダムの姿は、特報でしか観ることのできない「幻のバルカンシーン」として、現在まで往年のファンの記憶に残り続けている。
株式会社WEB-WINGがトークショー内で大森英敏に質問した際の回答として、νガンダムの指先からダミーバルーンを射出するギミックなどは、富野由悠季監督が考案したものであり、現場には監督本人から具体的な指示として降りてきた——と語られた。劇中で見せる細やかなメカ・ギミックの多くが、監督の発想と作画スタッフのすり合わせで成立していたことを伝える証言である。
大森英敏が富野由悠季監督に対し、「イデオンでなぜ全員死ぬ必要があったんですか?」と質問したことがあったという。これに対する富野監督の答えは、ひと言だった。
「必然です」
劇場版『伝説巨神イデオン』の衝撃のラストについて、当の富野監督が現場でどう語ったかを伝える、希少な証言である。さらに、後日の取材において、大森英敏自身が現場で疑問に感じてきた様々な理不尽なシーンに対し、富野由悠季監督は同様に「必然です」のひと言で応じてきた——との追加エピソードも語られている。
本コーナーでは、2026年2月に開催された大森英敏氏のトークショーから、4つのエピソードをご紹介しています。
「大森爆発」とは、アニメーター大森英敏が『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』(1988年)のメカ作画監督・エフェクト作画監督として確立した、3次元的な爆発エフェクト作画の総称である。80年代に伝説的アニメーター・金田伊功が開拓した「金田爆発」の流れを汲みながら、宇宙空間ならではの3次元的な広がりを持つ爆発として独自に進化させた表現で、後の「磯爆発」へと継承された、リアル系エフェクト作画の先駆けとして位置づけられる。
大森英敏が逆シャアで起こした爆発の設定は、サイコフレームの共振光に包まれてアクシズを押し返すクライマックスシーンを含め、その後の日本アニメのエフェクト表現の系譜を決定づけた——とされる。
アニメーター・橋本敬史氏は「第135回アニメスタイルイベント 磯光雄の作画を語る!」で、次のように位置づけている。
大森英敏が『逆シャア』制作時に起こした爆発の設定は、メカ作監の重田敦司・磯光雄に受け継がれ、3次元的なエフェクト作画を生み出す先駆けとなった。 — 橋本敬史(伝聞・要旨)
磯光雄は逆シャアにペンネーム「小田川幹雄」名義でメカ作画監督として参加。逆シャアでの大森英敏の爆発設計を引き継ぎ、翌1989年のOVA『機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争』で「磯爆発」と呼ばれる独自の爆発表現を確立した。「磯爆発」はその後の日本アニメにおける、いわゆるリアル系エフェクト作画の標準を形成していく。
νガンダムのデザインコンペ参加者として作品成立に関わって以来、大森英敏は逆襲のシャア公式作品の絵師として継続的に起用されている。
『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』公式サイトの庵野秀明・出渕裕インタビューで、近藤和久・小林誠・鈴木雅久・大畑晃一・佐山善則と並び、νガンダム コンペ参加者として大森英敏の名が記録されている。
1988年3月12日公開の本編で、メカ作画監督・エフェクト作画監督として全編を担当。νガンダム・サザビーを含む全メカ作画と、ビーム・サーベル、ファンネル、爆発などの全エフェクトを設計・作画した。
『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア オリジナル・サウンドトラック完全版』のジャケットに、大森英敏によるνガンダム描き下ろし原画が起用された(サンライズ公式発表)。『ガンダム×WALKMANコラボ』のパッケージにも同氏の原画が採用されている。
2026年3月25日再プレス・アナログ盤『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア オリジナル・サウンドトラック』(完全生産限定盤)の裏ジャケットに、大森英敏によるサザビー描き下ろしが起用。表ジャケットの加藤直之によるνガンダムと並び、本作の二大モビルスーツが描かれた。本盤はνガンダムをイメージしたホワイト・ヴァイナル仕様、名匠バーニー・グランドマンによるカッティング。
大森英敏オリジナルキャラクター
大森英敏が生み出したオリジナルキャラクター群「SUPERVAN.C(スーパーヴァンク)」。猫耳を持つ個性的なキャラクターたちが音楽・演劇・アニメーションを横断する新しいエンターテインメントとして展開されている。
キャラクターデザイン・ストーリー・プロデュースまで、大森英敏が一貫して手がける渾身のプロジェクト。リーディングシアターやライブイベントを通じて世界観を直接届けている。
宇宙のどこかにある猫の星「Cat Earth(キャットアース)」の原宿Cat Streetを舞台に、シグマをはじめ、ボルテ、ファイ、コハクのバンドメンバーとプロデューサーのラムダ、妹のモカ。 仲間思いで個性的な猫たちが、『音楽のチカラ」で全宇宙を巻き込む事件を解決していく青春スペクタルファンタジー。
大森英敏 オリジナルキャラクター
大森英敏が20年来構想をあたためてきたオリジナル物語。 一年中ハロウィンの星パンプキン星は、 狼男やドラキュラ、魔物が住む、お祭り好きで陽気な星。
リゲル、スピカ、ミラ、アトリア 魔法使いのガールズバンド【ウイッチ・オー・ランタンズ】や、リゲルの妹リオの活躍を描く物語。
©HELLO WITCH GIRL / Hidetoshi Ohmori
バレンタインパニックニャ!
大森英敏総合プロデュース・声の出演によるリーディングシアター作品。SUPERVAN.Cキャラクターと音楽が融合した全く新しい舞台体験として好評のうちに終演。詳細は公式サイトへ。
公式サイトを見るアニメーター大森英敏の「RAKUGAKI」
2021年1月30日開設。アニメーション制作の現場から生まれるラフスケッチやキャラクターデザインの過程を惜しみなく公開中。40年以上のキャリアで培った技と感性をリアルタイムで体感できる。
チャンネルを見るよくある質問
大森英敏は1959年生まれの日本のアニメーター・アニメ監督です。「機動戦士ガンダム 逆襲のシャア」のメカ作画監督、「ファイナルファンタジーVII」のアニメーションディレクターを務め、400タイトル以上のアニメーション制作に参加してきました。
CCAは『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』の英語タイトル「Mobile Suit Gundam: Char's Counterattack」の頭文字を取った略称です。本作はアムロ・レイとシャア・アズナブルの最終決戦を描いたガンダムシリーズ初の劇場オリジナル作品で、本サイトでは大森英敏が手掛けたメカ作画・エフェクト演出を専用コーナーで詳しく紹介しています。
νガンダム・サザビーをはじめ、機動戦士ガンダム逆襲のシャア全編のメカ作画監督を担当したのは大森英敏です。1988年3月12日公開の本作で、富野由悠季監督から指名されました。
1997年スクウェア発売のファイナルファンタジーVIIでアニメーションディレクターを務めたのは大森英敏です。ゲーム内のアニメーションシーン全般を統括しました。
ゴールデンロミックス賞は、イタリア・ローマで授与される漫画・アニメ分野の国際的な賞です。大森英敏は2024年10月に受賞し、永井豪・富野由悠季に続く日本人3人目、アニメーターとしては初の受賞者となりました。
1984年放送の重戦機エルガイムで、大森英敏はメカ作画を担当しました。本作でメカデザイナー・永野護との交流が始まり、その後のキャリアの基盤となりました。
1985年放送の機動戦士Ζガンダムで、大森英敏は作画監督を担当しました。富野由悠季監督作品への継続的な関与の一環です。
大森英敏がテレビシリーズで初めて監督を務めたのは2004年放送の「DAN DOH!!」です。監督・キャラクターデザイン・絵コンテ・作画監督を兼任しました。
SUPERVAN.C(スーパーヴァンク)は、大森英敏が2021年から立ち上げたオリジナルキャラクター・プロジェクトです。猫耳キャラクターたちが音楽・演劇・アニメーションを横断するエンターテインメント作品で、大森氏がキャラクターデザイン・ストーリー・プロデュースを一貫して手がけています。
HELLOWITCH GIRL(ハローウィッチガール)は、大森英敏が20年来構想を温めてきたオリジナル作品です。一年中ハロウィンの星「パンプキン星」を舞台に、魔法使いのガールズバンド「ウイッチ・オー・ランタンズ」たちの活躍を描きます。
「アニメーター大森英敏のRAKUGAKI」というYouTubeチャンネルを2021年1月30日に開設しています。アニメーション制作の現場から生まれるラフスケッチやキャラクターデザインの過程を公開中です。
大森英敏は富野由悠季監督の作品に継続的に参加しています。重戦機エルガイム(1984)、機動戦士Ζガンダム(1985)、機動戦士ガンダム 逆襲のシャア(1988)など、80年代の代表作で作画を担当しました。
大森英敏とメカデザイナー・永野護は、1984年の重戦機エルガイムで出会い、以後交流が続いています。エルガイムでメカデザイナーを務めた永野護のデザインを、大森英敏が作画として画面に定着させました。
大森英敏の代表作は、機動戦士ガンダム 逆襲のシャア(1988年・メカ作画監督)、ファイナルファンタジーVII(1997年・アニメーションディレクター)、重戦機エルガイム(1984年・メカ作画)、機動戦士Ζガンダム(1985年・作画監督)、DAN DOH!!(2004年・監督)などです。
最新のイベント情報は本サイトのEVENTセクションで公開しています。トークショー、ライブドローイング、サイン会、展示会などを定期的に開催中です。直近では2026年4-5月に京都・神戸でイベントが予定されています。
はい、大森英敏は2026年現在も現役のアニメーターとして活動しています。近年では「ガンダム 水星の魔女」(2023年・第24話原画)、「バーテンダー 神のグラス」(2024年・絵コンテ)などに参加しているほか、SUPERVAN.C・HELLOWITCH GIRLなどのオリジナル作品も精力的に展開しています。
メカ・エフェクト作画監督を務めた大森英敏が、『スター・ウォーズ』のような表現を避けるために設計した独自仕様です。サザビーとνガンダムのサーベルが交わったときは丸くし、ビーム同士が干渉してエネルギーボールになり、出力差で消失する設定としました。この設定は出力差で切断が成立する論理にもつながっています(公式『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』サイト掲載インタビューより)。
大森英敏の回想では、富野由悠季監督から「ガンダムに羽根をつけたい」というリクエストがあったことが、フィン・ファンネル誕生の発端でした。後にウィングガンダムなど、本当に羽根を持つガンダムが登場しています。
メカ・エフェクト作画監督の大森英敏によると、富野由悠季監督から「煙を出したくない」というオーダーがあり、宇宙空間の爆発は基本を「丸」とし、光球をフェイドアウトさせる方向で設計したと語っています。これがいわゆる「光球エフェクト」として確立し、宇宙空間における爆発演出の基準のひとつとなりました(公式『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』サイト掲載インタビューより)。
はい、メカ・エフェクト作画監督を務めた大森英敏が公式インタビューで明言しています。サザビーとνガンダムではファンネルのビームの発射構造自体を別の仕様として設計し、エフェクトとしても異なる動きを与えています。設計差を作画で描き分けることで、両機の性格の違いを画面に反映させました。
アニメーター橋本敬史氏(第135回アニメスタイルイベント「磯光雄の作画を語る!」での発言)によれば、大森英敏が逆襲のシャアで起こした爆発の設定は、メカ作画監督として参加していた重田敦司・磯光雄に受け継がれ、3次元的なエフェクト作画を生み出す先駆けとなったとされています。磯光雄は逆シャアにペンネーム「小田川幹雄」でメカ作画監督として参加し、後の『機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争』で「磯爆発」と呼ばれる表現を確立しました。
はい、『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』公式サイト掲載の出渕裕・庵野秀明インタビューで、νガンダムのデザインコンペ参加者として大森英敏の名が挙げられています。コンペ参加に加え、2014年の『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア オリジナル・サウンドトラック完全版』でνガンダムのジャケット原画を描き下ろし、2026年3月25日再プレス・アナログ盤ではサザビーを描き下ろすなど、逆シャア公式の絵師として継続的に起用されています。
EXPLORE FURTHER
ここに書ききれなかった参加作品が、400本以上あります。
1979年から2026年までの記録を、すべて。