システム開発の手順・プロセス

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現在、多岐にわたるビジネスシーンで必要不可欠となっているシステム開発。しかし、その開発プロセスは簡単ではありません。まずは要件定義から始まり、設計、開発、テスト、そしてリリースという流れ、手順を経て、ようやく完成となります。


しかし、そのプロセスには様々な落とし穴があります。例えば、要件定義で双方の認識にズレがある場合、後々のトラブルの原因になりかねません。また、設計においてはシステムの全体像を見据えた上で設計することが大切です。さらに、開発手法も検討が必要であり、アジャイル開発とウォーターフォール開発にはそれぞれメリットがあります。テストにおいては、手動で行うことも大切ですが、自動化も導入することでロス時間を削減できます。そして、リリース前には必ず確認事項があります。

本記事では、これらのシステム開発プロセスにおいて、注意すべきポイントや効率的な取り組み方をご紹介します。

要件定義

システム開発のプロセスにおいて、最初に行われる作業が要件定義です。要件定義とは、システムの必要な機能や要求事項を明確に定め、開発に必要な情報を整理する作業です。

要件定義の方法

要件定義の方法には、以下のようなものがあります。

1. ヒアリング
関係者やユーザーに直接話を聞き、システムに求められる機能や要求事項を把握する方法です。ヒアリングには時間がかかることもありますが、現場の声を聞くことで、そのシステムの必要性や目的を深く理解することができます。

2. 調査
既存のシステムや関連する文献を調べ、必要な情報や改善点を整理する方法です。調査によって、市場動向や新技術の動向なども把握できるので、システムの将来性や展望も見据えることができます。

3. プロトタイピング
最初に設計したモックアップをもとに、実際にシステムの動作を確認することができる仮システムを作成する方法です。ユーザーの意見や改善点を取り入れつつ、システムを改良していくことができます。

要件定義の落とし穴

要件定義には、以下のような落とし穴があります。

1. ユーザーの実態を把握していない
ユーザーのニーズや業務の詳細を理解しなければ、システムが本来目指すべき方向性を見失ってしまうことがあります。ユーザーが望んだものと、開発したシステムが一致していない場合もあるので、ヒアリングや調査の結果をもとに、ユーザー視点でシステムを設計することが重要です。

2. 要件の不備や矛盾
要件定義において、不備や矛盾がある場合があります。これらの問題に気づかずにシステムを開発した場合、ユーザーから不評を買うことになります。要件定義後に、関係者やユーザーに再度確認をすることで、不備や矛盾を解消することが重要です。

3. 関係者とユーザーの協力が得られない
システム開発にあたって、関係者とユーザーの協力が必要です。しかし、協力が得られない場合があるので、開発者側から積極的に声をかけることが必要です。また、ユーザーが本当に必要とする機能や要求事項について、開発者側が適切にアプローチすることも重要です。

要件定義はシステム開発のうえで非常に重要な作業です。これらの落とし穴を避けながら、ユーザーの視点に立ち、よりよいシステムの開発を目指すことが大切です。

設計

設計の種類

設計には、以下のような種類があります。

1. 概念設計
製品やサービスの最初のアイデアの段階で、その発想を形にするための設計です。具体的な仕様や設計図を作成する前の段階で、目指す方向性を決めるために必要なプロセスです。

2. 詳細設計
仕様や要件に基づいて、具体的な設計図を作成する段階です。システムや製品の構造、各機能の仕様、部品や素材の選定などが含まれます。

3. 実装設計
詳細設計で決められた内容を実際に製造や開発するための設計です。具体的な作業手順や工程計画が含まれます。

4. プロトタイプ設計
製品やシステムの試作品を作成するための設計です。詳細設計の段階では分からなかった課題や問題点を発見し、改善するためのプロセスです。

5. 仕様設計
システムや製品の、具体的な仕様を決定するための設計です。機能や性能、品質などの仕様を決めてから、製品やシステムを開発する場合に必要となります。

設計のポイント

設計を行う際には、以下のようなポイントに注意する必要があります。

1. 目的や目標を明確にする
設計を行う際には、目的や目標を明確にすることが重要です。何を作るのか、どんな機能を実現するのか、どのような利用方法があるのかなど、具体的に明確にしておく必要があります。

2. 計画を立てる
設計を行う前に、計画を立てることが重要です。どのような過程で設計を進めるか、どのようなスケジュールで進めるか、何を優先するかなどを決定しておく必要があります。

3. ユーザーのニーズに合わせる
製品やシステムを作る際には、ユーザーのニーズに合わせた設計を行う必要があります。使いやすさや操作性、安全性など、ユーザーが求めている要素を考慮し、設計することが大切です。

4. 技術の進歩を取り入れる
設計を行う際には、技術の進歩を取り入れることが重要です。最新の技術や素材を使うことで、機能性や耐久性、安全性などを向上させることができます。

5. 課題や問題点を解決する
設計を進める中で、課題や問題点が発生することがあります。それらを解決するために、適切な対策を講じることが必要です。試作品を作成して課題を洗い出し、改善するためのプロセスが重要です。

6. クオリティを担保する
設計を行う際には、品質を担保することが大切です。正確な図面や仕様書を作成し、細部まで丁寧に設計を行うことで、製品やシステムの信頼性や安全性を高めることができます。

以上、設計において重要なポイントを紹介しました。設計を行う際には、これらを適宜参考にしながら進めることが大切です。

開発

アジャイル開発とウォーターフォール開発

アジャイル開発とウォーターフォール開発は、ITプロジェクトにおいてよく用いられる開発手法です。

ウォーターフォール開発は、開発に必要な全ての作業を順番通りに一度に行う手法です。一方、アジャイル開発は、大きな機能を小さな塊に分割し、少しずつ開発を進めながらユーザーからのフィードバックを取り入れていく手法です。

アジャイル開発は、ウォーターフォール開発に比べて柔軟性が高く、ユーザーの要望にスピーディーに対応できる反面、開発期間が長引いたり、予算を超過する可能性がある点に注意が必要です。ウォーターフォール開発は、計画段階での精度が高く、進捗が正確に把握できる反面、開発途中での修正が困難という課題があります。

どちらの開発手法を選択するかは、プロジェクトによって異なります。アジャイル開発は、ユーザーとのコミュニケーションが重要となるプロジェクトに適している場合があります。一方、ウォーターフォール開発は、費用の大幅な見積もりが求められるプロジェクトに適している場合があります。

開発手法の選び方

開発手法を選ぶ際には、以下のポイントに注目することが大切です。
  • プロジェクトの性格にあった開発手法を選択すること
  • プロジェクトの性格は、予算や期間、開発内容、利用者数などによって異なります。これらの要素を踏まえて開発手法を選択することが重要です。

  • チームメンバーの能力を考慮すること
  • 開発手法にはそれぞれ特性があり、チームメンバーが対応できるかどうかを確認することも重要です。例えば、アジャイル開発ではコミュニケーション能力や柔軟性が求められるため、それを満たせるチームメンバーが適任です。

  • リスクマネジメントを考慮すること
  • 開発手法によっては、予期せぬリスクが発生しやすい場合があります。それらに備え、リスクマネジメントを行い、開発手法を選択することが望ましいです。

  • プロジェクトに参加するすべてのメンバーが理解できること
プロジェクトに参加するすべてのメンバーが、選択された開発手法を理解していることが重要です。開発手法についての研修やワークショップを実施し、理解を深めることが望ましいです。これにより、開発のスムーズな進行と品質の向上に繋がります。

以上が、開発手法を選ぶ際に注目すべきポイントです。開発手法は、単一の最適解はありません。プロジェクトの性格やチームメンバーの能力、リスクマネジメント、メンバーの理解度などを考慮し、最適な開発手法を選択することが求められます。

テスト

テストの種類

ソフトウェアテストには様々な種類があります。それぞれのテストは、異なる目的で実施されます。以下に、代表的なテストの種類を紹介します。
  • ユニットテスト
  • ユニットテストは、ソフトウェア内の最小単位である「ユニット」を対象としたテストです。ユニットとは、関数やクラス、メソッドなど、一つの機能を持った最小の単位のことを言います。このテストを行うことにより、プログラムの機能性、正確性、信頼性を確認することができます。

  • 結合テスト
  • 結合テストは、複数のユニットを機能させる際に、それらが正しく連携できるかを検証するテストです。結合テストは、複数のユニットが意図した通りに動作するかを確認することができます。

  • システムテスト
  • システムテストは、開発したシステム全体を対象としたテストです。システムがユーザーの要求と仕様を満たしているかどうかを確認することができます。

  • 受入テスト
受入テストは、システムテストの最終段階で、ユーザーからの要求仕様書に基づいて、実際の使用環境下で動作することを確認するテストです。受入テストに合格することで、ユーザがシステムを利用する前提条件が整い、利用が開始されます。

テストのプロセス

テストプロセスには以下のような一般的な流れがあります。
  • テスト計画の策定
  • テスト計画は、どのようなテストを行うか、およびテストを行うためのリソースやスケジュール、責任者などを決定するための計画書です。

  • テスト設計
  • テスト設計は、何をどのようにテストするかを決めるための作業です。テスト戦略やテストケースを作成することが含まれます。

  • テストの実行
  • 実際にテストを実施します。テスト目的、順序性、合格基準それぞれに基づいて、自動テストや人手による実行を行います。

  • テスト結果の集計と分析
  • テスト実施結果を集計し、問題が発生した場合は、その原因を特定するための調査や分析を行います。

  • 問題の修正または回避策の実施
  • 問題が発生した場合は、どちらかの対応策を実行します。修正対応は、問題を発見した人が行うことが望ましいです。回避策は、システムに致命的なものでない限り、時間をかけて問題を修正するよりも、臨時的に問題を解決する方法です。

  • 再テスト
修正作業が完了した後、再度テストを実施し、問題が修正されたことを確認することができます。

テストの自動化

テストの自動化とは、テストケースを自動化ツールで実行し、結果を自動的に評価することを言います。テストの自動化は以下のようなメリットがあります。
  • 反復テストを実施しやすい
  • 人手で繰り返し実施しなければならない場合でも、テスト自動化により、簡単かつ正確にテストを実施することができます。

  • 継続的インテグレーションの改善
  • 継続的インテグレーション(CI)は、短い周期で改善を行うことを可能にする方法です。自動テストは、このプロセスを迅速かつ正確に行うことができます。

  • 再利用しやすいテストスクリプトの作成
  • 何度も実施されるテストを自動化することで、再利用性の高いテストスクリプトが作成できます。

  • 人的エラーをなくす
  • テスト自動化により、人的エラーを減らし、テスト実施の信頼性を高めることができます。

  • 時間とコストの削減
効率的かつ正確にテストを実施することができ、テストに要する時間やコストを削減することができます。

以上のように、テストには多様な種類があり、プロセスは理にかなったものです。また、テスト自動化には大きなメリットがあるため、導入することが多くなっています。しかし、重要なのは、テスト自動化があくまで補助的な役割を持つことです。テストの観点から自動化した場合、グレーゾーンである部分も多く存在するため、人手によるテストが必要不可欠と言えます。

リリース

リリースの方法

リリースとは、アプリやサービスなどを正式に公開することをいいます。リリースの方法は、ウェブアプリケーションやモバイルアプリの場合は、アプリストアなどで公開することが一般的です。アプリストアでは、事前に手続きが必要となります。その手続きには、アプリケーションのデータや仕様、アプリの使用方法や公開希望の日程などを登録することが含まれます。また、リリース時には審査が行われることが多いため、事前に修正や対応が必要な場合があります。

また、ウェブサイトの場合は、FTPなどでアップロードする方法が一般的です。アップロードの前には、ダウンタイムが発生しないようにサイトのバックアップを取ることが必要です。サイトを公開する前には、リリース前の確認事項を確認することが重要です。

リリース前の確認事項

リリース前には、以下の点を確認する必要があります。
  • 動作確認
  • リリースする前に、アプリやサイトの動作確認をすることが重要です。特に、新機能や修正した箇所などをしっかりと確認することで、ユーザーからの不具合報告を最小限にすることができます。

  • バックアップ
  • リリースする前に、サイトやアプリなどをバックアップすることが大切です。万が一の場合のために、バックアップを取っておくことで、早期の復旧が可能となります。

  • セキュリティ
  • リリース前に、セキュリティのチェックを行うことが必要です。例えば、アプリケーションに不正なアクセスができる脆弱性がある場合は、すぐに修正する必要があります。

  • 審査
  • アプリストアで公開する場合は、審査が必要になります。審査に通過しない場合は、修正や調整を行う必要があります。

  • 適切な説明文
リリース前に、アプリやサイトの説明文なども十分に確認することが重要です。適切な説明を入れることで、ユーザーがアプリやサイトに対して期待することを理解してもらいやすくなります。

以上が、リリース前に注意すべき点です。リリース時には、できる限り問題の起きないようにしっかりと準備をしておくことが、ユーザーからの信頼を得るためにも必要です。

まとめ

システム開発は多くの工程がありますが、その中でも重要なプロセスに要件定義、設計、開発、テスト、そしてリリースがあります。まず要件定義では、ユーザーのニーズを正確に把握することが重要です。ユーザーとのコミュニケーションをしっかり取り、要件をまとめます。注意が必要なのは、ユーザーが求めるものと開発者がイメージしているものが異なる場合です。

設計では、システム構成やアプリケーションの機能設計などが行われます。設計には大きく分けて外部設計、内部設計、詳細設計があり、それぞれに留意する必要があります。

開発には、アジャイル開発とウォーターフォール開発があり、その選択はプロジェクトの規模や期間、コストなどによって異なります。

テストでは、作成したシステムやアプリケーションをバグや不具合がないか確認します。テストには、単体テスト、結合テスト、システムテスト、運用テストなどがあり、それぞれに留意しながら進めていきます。また、テストの自動化によって品質向上と開発効率の向上を図ることができます。

リリースでは、システムやアプリケーションを実際にリリースして運用するための作業を行います。リリース前の確認事項としては、動作環境やインストール手順、ユーザーガイドの作成などがあります。

システム開発は多くの工程がありますが、適切に進めていくことで、ユーザーが求めるシステムやアプリケーションを開発することができます。定期的なコミュニケーションやテストの自動化、リリース前の確認事項をしっかり取ることで、品質の高い製品を開発することができます。
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